Interview Vol.05

株式会社電通 / 株式会社電通サイエンスジャム / 株式会社OOHメディア・ソリューション

アクティベーションビジネスセンター チャネルイノベーション部 / 取締役 / メディアプロデュース部

田村 昌一 / 木幡 容子 / 濱島 啓彰

    • はじめに、プロジェクトの概要のご説明をお願いいたします

      電通の田村と申します。

      私は現在、クライアントのセールス向上課題への向き合いをしつつ、情報・購買チャネルのソリューション開発や調査研究などに携わっています。

      電通はOOHメディア・ソリューション、Viibar両社とともに、IRIS様と共同でタクシーサイネージ「Tokyo Prime」内で掲載されるオリジナルコンテンツメニュー「Tokyo Prime Voice」を開発し、タイアップPR商品として販売しております。企業人の生のインタビューを企画・取材・制作・配信までパッケージにする形で、幸いご好評いただいています。

       

      ■参考URL
      http://tokyo-prime.jp.iris-tokyoprime.conohawing.com/20200114_viibar-and-tokyoprime/

      上記活動を進める中で、経営者・開発者などに語っていただく「Tokyo Prime Voice」のインタビュー動画自体へのご評価もいただいたのですが、それだけでなく、通常の広告素材とセットで見ると好印象や興味が増すのではないか、という感想が寄せられました。そこで、IRIS様でアンケート調査を実施してくださったのですが、インタビューと通常の広告動画をセットで掲載した形では、広告素材の認知率が媒体平均と比較して「10%程度高くなる」という結果が明らかになったんです。

      今回、この効果向上の要因を、より客観的な視点から明らかにするために、弊社グループ会社である電通サイエンスジャム協力のもと「ニューロリサーチ」を活用した広告効果検証プロジェクトを立ち上げました。

    • 「ニューロリサーチ」の実施概要について教えてください

      電通サイエンスジャムの木幡と申します。

      我々は様々な新しいテクノロジーを活用して、新しいビジネスを創造することを事業としておりますが、メインで行っているのは脳波測定による感性把握技術を用いたリサーチサービスとなります。独自開発の小型脳波計測機とタブレットを用いて計測を行うので、いつでもどこでも簡単に調査が可能となっています。また、リアルタイムで感情の変化を見ることができるため、どこのシーンで感情に変化が起きたかを調べることができます。

      頭に装着するだけなので、調査対象者の負担も軽く、タスクに集中することができます。

       

      今回このニューロリサーチを活用して、「Tokyo Prime Voice」がどのような感情で見られているのか、それによって広告素材がどのように感じ取られているのかを調査しました。

      被験者の方々には実際にタクシーに乗車して頂き、車内にてタクシーサイネージ「Tokyo Prime」を視聴頂きました。今回見ていただいたものは12本のコンテンツが繋がった約10分の動画になります。コンテンツにはTokyo Prime独自の取材記事や今回の調査対象となるTokyo Prime Voiceのインタビュー動画、各社広告がランダムに入っています。その中で、「Tokyo Prime Voice+その企業の広告のセット」と「他コンテンツ+他広告のセット」という2つの異なるパターンで、比較計測を行いました。

    • 「ニューロリサーチ」の実施結果について教えてください

      前記の通り、「Tokyo Prime Voice+広告」と「広告のみ」で比較をしました。その結果が下記のグラフになります。青がTokyo Prime Voice+広告、黄が別広告A、ピンクが別広告Bで、それぞれを視聴していた時間の感性値の平均を表しています。今回は「ストレス値(Stress)」「ワクワク度(Exite)」「集中度(Concentration)」の3つの指標で比較しました。

      その結果、「Tokyo Prime Voiceと広告」のセットが広告のみよりも集中度とワクワク度が高く、ストレス度が低いという結果となりました。通常、コンテンツから広告へ移行すると、ストレスが上がる傾向にあるのですが、Tokyo Prime Voiceと直後の広告の親和性の高さからスムーズに移行がされている可能性があります。同様に、コンテンツが変化することで集中が途切れることが多いのですが、今回は集中度も他の広告よりも維持されていました。

       

      Tokyo Prime Voiceのインタビュー動画とその企業の広告をセットで視聴する場合、認知率が平均より10%程度高くなったというアンケート調査結果がありましたが、今回の脳波を使った計測の結果からも、インタビュー動画と広告のセットが認知率向上をもたらす可能性が見えました。

    • 今回のプロジェクトを今後にどう繋げるか等教えてください

      (濱島様)

      OOHメディア・ソリューションの濱島と申します。

      私たちは屋外広告、タクシー含めた交通広告のメディアバイイングを行っております。私自身は4年ほどTokyo Primeの販売に携わっております。


      今回の脳波調査は、2019年末からIRIS様、Viibar様、電通様と取り組んでいる「タクシー乗車体験」の向上を目的としたタクシー車内コンテンツ施策である「Tokyo Prime Voice」についての効果検証を目的としたものです。

       

      タクシー車内のコンテンツは、活用方法や制作の工夫によって、さまざまなサービス展開の可能性がある領域だと感じております。工夫次第でタクシー広告の効果を最大化することができると、私たちは信じております。他にも掘り下げたいポイントはたくさんありますが、「より効果的に、かつ快適に情報を受け取っていただくにはどうすればよいか?」といった点に、まずは迫っていきたいと考えております。

      今回の実験では、その効果の一端を定量的に理解することができました。

      ひとつの実験結果とはいえ、議論や試行錯誤の結果がポジティブなデータとして表れたこと、ほっとしています。

       

      こうした基礎的な研究を継続して行うことで、「Tokyo Prime Voice」を含むタクシー車内コンテンツへの理解を深めたいと思います。そして、タクシーにご乗車しているお客様が、ご出稿企業様の商品やサービスに対し、より深く理解・共感できるタクシー車内コンテンツをご提供していきたいと考えております。

       

      (田村)

      濱島さんも言及していますが、今回の結果は個人的にも非常に興味深いものでして、さらなるタクシーならではの効果(?)に迫れたらとも感じています。

       

      実は以前「なぜYouTubeクリエイターの動画は効くのか」ということを調べたくて木幡さんと一緒に脳波を測ったことがあるのですが、そのときに出た結果(YouTubeクリエイターの動画が活性・ポジティブな感情で視聴されている)と今回のものに似た部分もあるのではないか・・・等ということも感じており、猛烈に「次の実験をやりたい」とも思っております(笑)

       

      (木幡)

      そうですね(笑)タクシーという空間が持つチカラのようなものが少しでも明らかになり、それがタクシーサイネージの進化につながり、世のため人のためになれば、素晴らしいと思います。